卑劣恋愛
☆☆☆

それから眠ることができないまま、朝が来ていた。


昨夜見たものを忘れようとすればするほど、記憶は鮮明によみがえって来た。


父親が近所の大学生を好きなことは知っていた。


その愛情が少し歪んでいることも……。


あたしは書斎の藁人形を思い出してた。


好きの度合いが大きくなれば、それは憎しみにも変わりやすい。


父親の気持ちはきっとそこまで至っていたのだろう。


そんな時、お姉さんに彼氏がいることを知ってしまった……。


それがキッカケになって、父親の気持ちは暴走したみたいだ。


その気持ちは、理解できた。


あたしだって、武を見ていてモヤモヤした気分になることは多かった。


特に、照れ屋な武だからあたしは随分と我慢して来ていると思う。


「あ~あ……あたしもこのまま死ぬのかな」


布団の上で横になり、あたしは呟いた。
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