卑劣恋愛
「でね、今日はこれで遊ぼうと思って持って来たの」


千恵美はそう言うとバッグの中から瓶を取り出した。


500ミリペットボトルくらいの大きさで、透明な液体が入っている。


「なにそれ……?」


「これ? これはね」


千恵美は瓶の蓋を開けてニッコリとほほ笑む。


「硫酸だよ」


「え……?」


瞬間、青ざめていた。


全身の体温が抜け落ちて冷たくなっていく。


「カッターナイフで切り裂くのって、結構手間がかかるなぁと思って、通販で買ったの」


千恵美はボトルを揺らしながら言う。


その度に液体が瓶の中でチャプチャプと音を立てた。


「まさか……あたしの顔にかける気!?」


「せいか~い!!」


千恵美は嬉しそうな声で言い、武がそれに合わせて拍手する。
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