卑劣恋愛
お姉さんの遺体が腐敗しないように、周囲にドライアイスを並べているようなのだ。


だから、洞窟の中がここまで冷えていたのだ。


でもこんな風に保管しておいてどうするつもりだろう?


そう考えたけれど、答えはすぐに見つかった。


あたしの愛情表現は父親によく似ている。


そう考えると一目瞭然だ。


父親はここへ足を運び、お姉さんの死体を愛でるつもりでいるのだろう。


例えば武が死んだとしても、あたしはきっと同じことをするだろう。


そうすることでようやく武を自由にできるのなら、それでもいいと感じられた。


「まずは智樹を解放してあげないとね」


あたしはそう呟いて、立ち上がったのだった。
< 187 / 262 >

この作品をシェア

pagetop