卑劣恋愛
「硫酸を購入していたんです。ネットショップの購入履歴を見ればすぐにわかりますよ」


「そんな……! 部屋を開けるだけでいいんですね?」


「もちろん、約束します」


大きく頷くと、千恵美の母親は一度リビングへと向かった。


妙な事をされないよう、あたしもその後を続いていく。


食器棚から銀色の小さな鍵を取り出すと、すぐに戻って来た。


「これでいいんですよね?」


何度もあたしに確認しながらドアの鍵を開けた。


その瞬間、あたしは千恵美の母親の体を突き飛ばして中に踏み入れていた。


普通の部屋よりもドアが分厚くて重たい。


部屋の中央にはグランドピアノが置かれていて、すぐに千恵美の部屋だとわかった。
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