卑劣恋愛
突然の難題に智樹は眉を寄せるが、一生懸命低い声を出そうとしている。


「電話越しなら誤魔化せるかもしれないな」


しばらく低い声を練習した智樹が言った。


「そうだよね」


あたしは頷いた。


特殊詐欺なんかでも、親族を装って電話をかけたりしている。


人間の耳は意外と信用できないものだ。


「どこに呼び出す?」


智樹に聞かれてあたしは腕組みをした。


もう山小屋に呼ぶことはできない。


だけど、できればその場で拘束できる場所のほうがいい。


武を無理矢理連れて移動するのは、リスクが高すぎる。


しばらく考えた後、あたしは「総合体育館はどう?」と、言った。


総合体育館はあたしの家の近くにあり様々な年齢層が理想するため、学生のあたしたちが出入りしていても不振がられない。


なおかつ、体育館ということで武も不信感が少なくて済む場所なのだ。
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