卑劣恋愛
☆☆☆

それからあたしと智樹の2人は総合体育館に来ていた。


広い駐車場には10代くらいの車が停まっていて、中からシューズがこすれる音が聞こえてきている。


建物の周りは生垣で囲まれているため、ひと目につきにくい条件になっていた。


体育館の入り口横には公衆電話が設置されているので、これも使えそうだ。


「武が来たとして、その後どうするかだな」


体育館の周辺をグルッと調べてから智樹が言った。


「これを使って」


あたしは持参してきた小型ナイフを智樹に手渡して言った。


「ナイフ……?」


「本当に切りつけたりしないでよ? 脅して、あたしの家まで来てもらうだけなんだから」


あたしは念を押すように智樹へ言った。


「わかってるよ。でも、思わず刺したりしないかなと思って」


「なにそれ」


「俺にとって武はライバルだ。いない方がいいに決まってるだろ」
< 202 / 262 >

この作品をシェア

pagetop