卑劣恋愛
☆☆☆

それから1時間後、まんまと騙された武が体育館裏に来ていた。


「牧先生？」


そう声をかけながら校舎裏に来た武を智樹が後ろから羽交い絞めにしていた。


「なにすんだよ智樹！」


相手の顔が見えなくても誰だかわかったようで、武は智樹の名前を呼んでいる。


「悪いな武。ちょっと来て欲しいところがあるんだよ」


「来てほしいところ……？」


「大丈夫。抵抗しなければなにもしない」


智樹はそう言い、ナイフの先を武の頬に押し当てた。


武の顔はまだ晴れが引いておらず、絆創膏やシップなどで痛々しい状態だ。


「どうするつもりだよ」


武の質問、あたしは体育館の隅から移動して姿を見せることにした。


あたしを見た瞬間、武は硬直してしまった。
< 204 / 262 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop