卑劣恋愛
疑問を感じるより先に、その光景に嫌悪感が駆け巡っていた。


体中にどす黒い、汚い液体が循環しているような感覚。


あたしは大股で2人に近づいた。


あたしに気が付いた武が一瞬にして眉を寄せる。


千恵美の方はキョトンとした表情をあたしへ向けた。


千恵美の長いまつ毛がまばたきをすつるたびに、嫌味のように揺れている。


少し目が大きくて可愛いからって、人の彼氏とイチャイチャしていいわけがない。


「ちょっとあんた、武に何の用事?」


あたしは千恵美の前で仁王立ちをして、そう聞いた。


千恵美は驚いたように目を丸くし、あたしと武を交互に見つめる。


「2人って付き合ってたの?」


マヌケ面でそう聞いてくる千恵美に、怒りが脳天へと突き上げる。


それでも今は武の前だ。


あたしは溢れそうになる怒りをどうにか胸の奥へと押し込めた。
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