卑劣恋愛
「そういえば、今日の午後警察の方が来るからね」


キッチンを出る前にそう声をかけられて、あたしは立ち止まった。


「え、なんで?」


眉を寄せて振り返る。


警察には家に戻ってきた時に適当な嘘をついた。


「ほら、同じクラスの西本くんって子も、同時期に行方不明になったでしょう? なにか関係があるんじゃないかって思ってるみたい」


智樹のことだ。


あたしは大きなため息を吐きだした。


あたしも智樹も同時期に監禁されていたのだから、警察がそれを見過ごすはずがなかった。


「ノドカ、本当は西本くんと一緒にいたんじゃないの?」


母親に質問されて、一瞬否定しようかと考えた。


でも、ここはその思い込みに便乗してみてもいいかもしれない。


あたしと智樹は2人で家出をして、そのまま駆け落ちをしようとしていたことにすれば、大人たちは安心するんじゃないだろうか?
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