卑劣恋愛
☆☆☆

武が素直になるまで、まだもう少し時間がかかりそうだ。


その間智樹と連絡を取ってみると、千恵美は智樹の家で大人しくしているようだった。


武の扱いとは大違いで、またため息が出てしまう。


《智樹:それより、今回の報酬は?》


智樹からのメッセージにあたしは途端に冷めた気分になってしまった。


もういいじゃん。


それぞれに好きな人同士でいるのだから。


そんな気持ちをグッと押し込めて、メッセージを打ち込む。


《ノドカ:千恵美のことを好きにしていいよ》


千恵美はいくら智樹に抱かれても嫌だとは言わないはずだ。


こんなに都合のいい報酬はない。


《智樹:俺が好きなのはノドカだ》


まだそんなことを言っているのか。


しつこい智樹に苛立ちが湧き上がって来る。


武の監禁には成功したことだし、いっそ切ってしまおうか。


そう思ったが、警察にすべてを話される危険があった。


そうなるとあたしたち4人の事が徹底的に調べあげられて、武と引き裂かれるのも時間の問題だ。


《ノドカ:わかった。また今度ね》


あたしは舌打ちをしてメッセージを送ったのだった。
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