卑劣恋愛
「もしもし?」


仕方なく電話にでると、智樹の元気な声が聞こえて来た。


『ノドカ、今から出て来れないか?』


その質問にあたしは武へ視線を向けた。


武はジッとあたしを見つめている。


あたしは自分の部屋を出て、廊下で電話を再開させた。


「どうかな。武が1人になるのはちょっと……」


『少しだけでいいんだ』


「なんの用事?」


『それは……会ってから話す』


その言い方は少しだけ焦っているように感じられた。


もしかして、千恵美と何かあったんだろうか?


逃げられたとか?


そう思ったけれど、千恵美が自分から智樹の元を離れるとは思いにくかった。


他になにかトラブルでもあったのかもしれない。


「わかった。少しだけね?」


あたしは念を押すようにそう言ったのだった。
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