卑劣恋愛
「誰か! 助けて!」


懸命に声を上げてみると、自分の声が部屋中に響いた。


窓は1つもなくて、部屋の天井には頼りない裸電球が1つ。


そして、部屋の奥に上へと続く階段が見えていた。


しかし、部屋に入るためのドアは見当たらない。


この構造を確認して、あたしはため息を吐きだした。


ここはきっと地下室だ。


窓もドアもないから、いくら声を張り上げてみても、上に届く事はないんだろう。


「そんなに声を出しても無駄よ?」


そんな声に悲鳴を上げそうになった。


誰もいないと思っていたけれど、部屋の隅に千恵美が立っていたのだ。


闇と同化するように立っていた千恵美はゆっくりとあたしの前まで移動してきた。


「千恵美! あたしを助けて!」


「助けるわけないでしょ? あたしは智樹に言われて見張り役をしてるんだから」


千恵美はそう言うとあたしの目の前に座り、突然頬をつねりあげて来た。
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