卑劣恋愛
「痛い！　なにすんの！」


顔をしかめて抗議すると、千恵美はすぐに手を離した。


「こんな女のどこがいいのかなぁと思って」


千恵美は自分の方が有利な立場にたっているため、さっきからニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべている。


千恵美は小屋の中で、あたしに硫酸をかけようとした女だ。


この状況は好都合だろう。


「どうしたのノドカ、顔が真っ青だよ？」


自分でも気が付かない間に血の気は引いていて、小刻みに震えだしていた。


「本当は、今すぐにでもあんたのことを殺してしまいたいけれど、智樹に怒られるから我慢してあげる」


千恵美は言いながら立ち上がり、あたしの腹部を思いっきり蹴り上げて来た。


あたしは「グッ！」と低い声を漏らしてくの文字に体を歪めた。


ジンジンとした痛みが体を突き抜けて行く。


「こんなことしたら……智樹がなんて言うか……」


あたしはどうにか声を振り絞って言った。
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