卑劣恋愛
智樹があたしの家に?


どうして?


そう考えるが、体中に汗が流れ出して上手く言葉にならなかった。


「ノドカが1人で武を監禁した。って、ノドカの母親に伝えて来るって言ってた」


「な……んで……?」


そんなことをしたら、あたしと武は完全に引き裂かれてしまう。


それ所か、あたしは家にも学校にも居場所がなくなってしまうだろう。


「ひとりぼっちになる悲しさを、あんたも味わうといいよ?」


千恵美はそう言い、あたしの背中を思いっきり蹴り上げた。


一瞬呼吸ができなくなり、口が大きく開いた。


それでも空気が吸えなくてヒッヒッと喉を鳴らす。


涙が滲んで背中の激痛に悶えた。


「そろそろ智樹が戻ってくるよ」


千恵美はそわそわと落ち着かない様子で階段へ視線を向けている。


ようやく空気を吸い込むことができたあたしは、深呼吸を繰り返した。
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