卑劣恋愛
だけど、あたしからすれば当然の結果だった。


色々なことを試してみて、武はやっと照れ屋を克服してくれたのだから。


あたしのしてきた努力は間違いじゃなかったと、証明された瞬間だった。


「ちょっと、どういうこと?」


突き飛ばされた千恵美が智樹へ向けて聞く。


「俺にもよくわからないんだ。でも武は『誘拐なんてされていない。自分からノドカの家に来たんだ』って、頑なに言うんだ」


「冗談でしょ? 武はあたしのシモベなのに!」


悔しそうに叫ぶ千恵美。


その間に武はあたしを拘束しているロープを外してくれていた。


智樹も千恵美も、武の変わりよう見て動けずにいたのだ。


「ありがとう武」


「平気? 怪我はない?」


武はあたしの体を抱きしめて質問して来る。


千恵美に蹴られた背中がまだ痛んだけれど、今までにないほどの幸福感に包まれているあたしは黙っていることにした。
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