卑劣恋愛
どうしよう……。


そう考えた時、部屋にノック音が聞こえて来た。


「はい……」


気のない返事をすると、母親がドアをあけて顔をのぞかせた。


「あんた。明日からお弁当を作って持って行くとか、言ってなかった? 作るなら、
材料買いにつれて行くけど、どうするの?」


「もちろん、行く」


返事をしながらも、あたしはスマホから視線を外さなかった。


「何を見てるの?」


母親が興味津々に人のスマホを確認して来る。


「あら、武くんの写真? イケメンよねぇ、あの子」


学校行事で何度か武の姿を見ている母親はそう言い、ほほ笑む。


「この隅に写っている女の子は誰? 可愛い子ね」


千恵美を指さしてそう言われ、あたしは咄嗟にスマホをひっこめていた。
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