卑劣恋愛
☆☆☆

遅刻してしまうと思って走って来たら、いつも通りの時間に武の家に到着した。


あたしは大きく深呼吸をして前髪の乱れを整える。


そして、玄関のチャイムを鳴らした。


すぐに中から武のお母さんの声が聞こえてきて、ドアが開いた。


あたしは満面の笑みを浮かべて「おはようございます」と、お辞儀をした。


「ノドカちゃんおはよう。今日は武と約束してたのかしら？」


そう質問をしながら、困ったように首を傾げる。


その様子に一瞬にして不穏な空気が漂った。


「もしかして、武はもう出ちゃったんですか？」


「そうなのよ。もうすぐ部活も引退だから朝練もしっかり出ておきたいんだって言って。ごめんなさいねノドカちゃん。あの子、ノドカちゃんとの約束を忘れたみたいね」


武のお母さんの説明に、あたしは一瞬奥歯を噛みしめた。


本当に朝練に参加しているのかどうか、怪しいものだった。

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