卑劣恋愛
「何言ってんの? 早く食べるよ?」


あたしはそう言い、武の手を掴んで強引に自分の席へと向かった。


しかし、その手は途中で振り払われた。


あたしはお弁当を片手に持ったまま、武を見つめる。


「俺、友達と一緒に食堂で食べるから」


照れ屋の武は冷めた声で一言言い、教室を出て行ってしまったのだった。


あたしはその後ろ姿を見送り、見えなくなると同時に笑い出していた。


「あはははは!!」


あたしの笑い声に、クラスメートたちが視線を向ける。


何事かと、ヒソヒソと会話する女子たちもいる。


それでもあたしは笑うのをやめなかった。


「武ってば、照れ屋だなぁ」


大きな声でそう言い、武の分のお弁当箱を開けた。


玉子焼きにウインナーにおにぎり。


美味しそうな食べ物がギュッと詰まっている。


武はサッカー部で体を動かしているから、おにぎりは大きめにしたんだ。
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