卑劣恋愛
☆☆☆

放課後になって武が教室から出るのを見送り、あたしはのんびりと帰る支度を始めた。


今日もサッカー部を見学するつもりだから、武がグラウンドに出る時間に間に合えばいい。


「ノドカ」


後ろから声をかけてきたのは智樹で、あたしは一瞬にしてするどい目つきになった。


「なに?」


今朝から武に食って掛かっていたし、智樹は信用できない人間だ。


「話があるんだけど、ベランダに出られるか?」


そう言われて、あたしは教室のベランダへと視線を向けた。


休憩時間になると生徒たちが気分転換のためによく利用する場所だ。


今は放課後だから誰の姿も見えない。


あたしはチラリと時計へ視線を向ける。


武が着替えてグラウンドに出てくるまで、まだ少し余裕がある。


「いいよ」


あたしは頷いて、智樹の後に続いた。
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