卑劣恋愛
後輩たちのお蔭で武の活躍ぶりを間近で観戦することができる。


おまけに、後輩たちは気を使って声援を最小限にとどめているから、あたしの声がよく通る。


「武、頑張って！」


そう言うと、武はドリブルをしながらチラリとあたしへ視線を向ける。


武がこちらを向いた瞬間大きく手を振った。


毎日こんな風にアピールしているから、あたしと武の関係は徐々に近づいてきているはずだった。


２時間の練習を最後まで観戦してから家に戻ると、あたしはすぐに武へメッセージを送った。


《ノドカ：今日の試合も良かったよ！》


武は今反省会をしているハズだから、こうしてメッセージを送っておけば後から返事をくれるのだ。


最初の頃は部活の反省会が終わるまでずっと待っていたのだけれど、武に『遅くまで待ってると危ないから早く帰れ』と言われて、今では素直に帰るようにしている。


だって、せっかく武があたしのことを心配してくれているのだ。


無視なんてできなかった。

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