卑劣恋愛
恥ずかしがり屋の武は、練習中にあたしが手を振っても反応したことがなかった。


メッセージのやりとりをするようになったのだって、あたしが何度も何度も何度も何度も、武に頼み込んだからだった。


でも仕方ない。


だって武は恥ずかしがり屋なんだから、その辺はあたしが合わせてあげないといけないと思う。


だからあたしが気になるのは、メッセージのそっけなさではなかった。


あたしは毎日学校から戻った6時30分きっかりにメッセージを送っている。


昨日武から返事が来たのは7時15分32秒だった。


でも、今日は……。


あたしは時計を確認して親指の爪をガリッと噛んだ。


7時15分33秒……。


「なんで? どうして昨日より1秒遅いの? 何をしてて遅くなったの? その1秒があれば他の女とキスくらいできるよね?」


ブツブツと呟きながら部屋の中を歩き回る。


嫌な予感が胸に渦巻き、嫌な汗が滲んでくる。
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