卑劣恋愛
あたしはすぐに裏手に回って室内へ踏み込んだ。


その瞬間、武が赤毛に殴られて倒れ込むのを見た。


武の綺麗な顔に血がついている。


口の端を切ったようだ。


「なにすんの!!」


あたしは奇声をあげて赤毛へ向けて片手を付き上げる。


「うわ、なんだよこいつ」


不意に現れたあたしに、赤毛はたじろいて後ずさりをした。


「武を殴るなんて許せない!!」


もう、頭の中は真っ白だ。


とにかく目の前にいる人間を許すことができなくて、殺してしまいたいとまで考えて尽き進む。


「ごめん、計画失敗したみたいだ」


智樹のそんな声が聞こえて来ても、あたしは止まらなかった。


この男を一発殴らないと気が済まない。
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