あの日、君と誓った約束は
教室に着くと、窓から入ってくる春の生ぬるい空気と、新しい制服の匂い、そして高揚感と緊張感が充満していた。知らない人を物色するような視線が行き交い、室内はざわざわとしていて落ち着かない。

移動を終えて、続々と席に着く生徒たち。厳しそうな男の先生が入ってきたことで、浮わついた空気が一気に張り詰める。騒がしかった教室はうっとうしかったから、それで少しほっとした。けれど、先生からの話が一通り終わると自己紹介をすることになり、面倒くさいな、とため息をつく。

「嶋野萌香です。ちょっと緊張していますが、よろしくお願いします!」

嶋野さんがはにかみながら椅子に座ると、どこかから「かわいー」という声が聞こえた。

「瀬戸結子です。よろしくお願いします」

嶋野さんの次に、淡々とそれだけ言って頭を下げる。嶋野さんの自己紹介で明るくなった教室が、また張り詰めた気がした。

そのとき、前の方の席に座っている男子と思いきり目が合った。すぐ逸らされるかと思ったのに、彼の視線は私へ向けられたままだ。そのあからさまに注目したような感じが嫌で、私はすかさず着席した。

次の人が自己紹介している間も、彼はじっとこちらを見ていた。うしろの席の人ではなく、私を見ている。
座っていても、周りより頭ひとつ抜けていて身長が高いことがわかる。目はきりっと細く、鼻筋が通っていて、端正な顔つきをしていた。

人の自己紹介を全然聞いていなかったから、名前はわからない。けれど彼の顔を見ていると、身体の奥の方から鳥肌がたつような、悪寒が走るような、とにかく嫌な感じがしてくる。まるで睨むような目つきでこちらを見てくるから、その視線から逃げるように私はずっとうつむいていた。
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