あの日、君と誓った約束は
ホームルームが終わり、それぞれ帰り支度をする中、さきほどの彼がこちらの方へ近寄ってきた。関わりたくないと思った私は、配られたプリントを手早く片づけ、沙和の席へ向かおうとする。

「萌香」

私がバッグのチャックを閉め終えたと同時に、彼が前の席の嶋野さんにそう声をかけた。私は途端に拍子抜けして、肩の力を抜く。
なんだ、嶋野さんに用があったのか。というか、もしかしたらさっきのだって私じゃなくて嶋野さんを見ていたのかもしれない。少し恥ずかしくなったけれど、なんともないような顔をつくって帰り支度を整える。

「帰り、どうする? 俺、隼人(はやと)と寄るとこあるんだけど」
「あ、大丈夫だよ。ひとりで帰れる」
「じゃ、明日の朝は一緒に」
「ありがとう。うちの親も、高校同じだし頼りにしてるって言ってた」
「あぁ、べつに全然」

どうやら家族ぐるみで仲がいいらしい。もしかしたら、付き合っているのかもしれない。まぁ、私には関係ないけれど。
そう思いながら沙和の席まで行く。私と沙和は同じバスだから、一緒に下校する約束をしていたのだ。

「お、結子、早いね。帰ろうか」
「うん」
「なんか、今日はいちだんと色が白いよ? 貧血?」
「知らない人ばっかりだから疲れたのかもしれない」

眉間をつまんでそう言うと、
「まーね、たしかに疲れるよね。でも結子、ご覧なさいよ、ここにもあそこにも新たな出会いが落ちているのを」
と、沙和が演技まじりに手を広げる。
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