とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
「なっ」

「いやあ、隠しても分かっちゃいますかあ。ははは」

一矢くんの発言は、まあおじいちゃんに合わせてくれてるとしても、夫婦としては私たちは何も機能していない。

「これ聞いたら、今の時代、セクハラになるらしいけどお、孫まだ?」

「おじいちゃん!」

 セクハラではないかもしれないけど、でも今、この状況でそんな話、やーめーてー。

「はは。それは華怜としっかり話し合いますよ」

「えー? まだ話し合ってないのお」

「急いで結婚したから、今は二人の離れていた時間を埋めたいなって」

一矢くんも、どうしたの。なんで惚気ているような様子で話すの。

祖父には何も心配かけたくないって考えなら、私も大賛成なのに。

「どうしたの? さっさと食べないと冷えるよ」

「えええ」

気づけば私のパスタも運ばれている。

一矢くんは腕時計を確認することも携帯を見ることもせず、優雅に話をしてくれていた。

おじいちゃんの相手も全く苦になっていない様子。
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