とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
「意気投合したのは、改装した時だよ」

「ふうん」

「なんだ? どっちにヤキモチ焼いたんだ?」

にやにや笑うお爺ちゃんを睨みつつ、スパゲティをフォークにくるくる巻いて口の中に詰め込んだ。

 おじいちゃんは始終にこにこで、一矢くんも笑顔で食事をしていたんだけど、……何かひっかかる。

二人の親密な様子もだし、おじいちゃんがお土産を連絡なしで来るのも、なんだろう。

「お、ハニーから電話だ。失礼」

しかもおばあちゃんとの電話ならわざわざ席を立たなくても、いいのに。

「なあんか、怪しいね」

「何が?」

「おじいちゃんと一矢くん」

「そお?」

 珈琲を口元に持って行きながら目を伏せる。その仕草もなんだか全て怪しく見える。

「私さ、男性を今まで視界に入れてこなかったから、視界に入るようになった一矢くんを観察できるようになったんだけど、取り繕う時に伏し目がちになって口を隠すよねえ」

「……」

「おじいちゃんと交流はいつから?」

食べ終わった私は、運ばれてきた食事を前に、動きを止めた一矢君を見る。

「やましいことがあるなら隠してもいいけど。私には関係ないしね。別にいいよ。人って言いたくないこととか本性はばれたくないもんね。うん」

自分でも厭味ったらしいなあって思うけど、しょうがないじゃない。

私だけ隠してること、沢山ありそうな勘があったんだもの。
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