とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
「そこまで観察されるのは悪い気がしないけど。じゃあちゃんと俺の気持ちもわかってくれてるのかな」

「今ははぐらかさないで」

 誤魔化そうとするあたり益々怪しい。

 私がにこにこ笑って、ただただ無言でパスタを食べると観念したように息を吐く。

「俺が父の跡を継いで、社長になった時だよ。お世話になっている人たちへ挨拶回りして――会食して――ってとき」

「ほお」

 じゃあ隠す必要はないんじゃないの。

「祖父の誕生日パーティーの時も会ってるし、なんなら華怜とうちの妹以外は、交流あるよ」

「そう。教えてくれてありがとう」

交流があったことを秘密にしていた理由は分からないけどじゃあ、母とも交流があるということ。

母は、借金の肩代わりをしてくれたってだけで急に一矢さんと改装の時に話が持ち上がったようは口ぶりだったのに。

「すまんすまん。ハニーが近くの和菓子屋の豆大福が食べたいらしくってそちらにもいかなければいけなくなった」

お爺ちゃんは、にこやかな私と黙々と食事をする一矢さんを見て、楽しそう。

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