とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
「お一人で大丈夫ですか」

「もちろん。日本なんて儂の庭のようなものだ」

おじいちゃんデザートにチョコレートパフェも食べて帰っていった。

タクシーを二人で見送り、車が完全にいなくなってから彼は時計を確認した。

「悪い。急いで帰らなきゃギリギリだ」

「……だから、おじいちゃんの呼び出しに無理しなくていいって」

「無理じゃなくて、俺がしたかったってこと。じゃあ、今日は遅くなる」

 呼んでいたタクシーがもう一台、お店の前で止まってくれた。

 私は歩いて帰れる範囲なので、乗り込む彼に手を振る。

「じゃあ、私の方が帰るの早いかな。食事は?」

「うーん。華怜のハンバーグが食べたいかな」

「了解です」

意外と子どもっぽいメニューが好きだよね。助かっているけど。

ハンバーグなら、家にひき肉とパン粉があった気がする。

もしかして家にある食材の中から答えてくれたのかな。

くるんと振り返ると、コンビニの袋を持った辻さんと目が合ってしまった。

口元に手をおいて、笑いを必死に隠している。

「……新婚ぽいね」

「う……」

数週間会ってないのに、髪にとれかけてたパーマがしっかり掛かり、青みがかった黒になっている。

「しかも俺を見て怯えていない」
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