とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
仕事中の彼女を見て、今まで女性に興味を見てなかったり疑心暗鬼になって恋愛に発展するのが億劫だった理由が分かった。

微笑む姿は凛として美しく、短い髪は太陽のように明るくきらめき、ふっくらした唇は可愛らしい色で整えられ、俺の心を魅了した。

なのにまだ、彼女は髪を伸ばせていない。

再び玲華さんのもとへ向かった。

「彼女は男性恐怖症なんですか」

 直球で聞くと、仕事中にもかかわらず仕事を抜け、話を聞いてくれた。

「そうね。華怜は一人で生きていくと決めたみたい。誰かを必要とせず誰かを求めることない。傷つくことはないし楽しい人生かもしれないわね」

ヒステリックに叫んでも効果はないのに、強くいってしまった私も悪いと玲華さんは言う。

「誰かを好きになる気持ちを、誰かに愛される幸せを知らずに生きていく娘をどうにもできない。幸せならそれでいい。いつか、もしかしたら」

「いつか、ではなく。俺でもいいですか!」

気づけば叫んでいた。俺はどうしても彼女の目の前でもう一度姿を見てほしかった。

玲華さんは俺を頭の先からつま先まで見た後、微笑んだ。

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