とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
あの時みたいにショックで気を失うことはない代わりに、時間が停まっているように感じた。
発狂していないのは傷ついていないからだ。
私は、一矢くんの嘘で傷ついていない。
「……一矢くんは、私のどこがいいの。どうしてここまでしたかったの」
抱きしめられた腕の中で、行き場をなくした私の手が今、ゆっくりと彼の背中に触れようとしていた。
「また笑って話がしたかった。それにあの日から気持ちはきっと溢れて溢れていたんだ。自分が気づかないまま」
「都合がいい話だね」
じゃあさっき、自分でも自覚したの。
なんて私には言えるわけない。
私は恋を知らない。私には、その衝動が分からないはずだから。
「沢山傷つけて悪かった。許してくれとは言わない。でも一緒に住んでいって、今の華怜に惹かれていったんだよ」
私もだ。
どんなに忙しくても朝食を一緒に食べようと言ってくれた。
目も合わせない可愛げのない態度の私に、苺が好きだと勘違いしてデザートに頻繁に苺をつけてくれた。
男性恐怖症を克服したかと思って男性がいる飲み会で遅くなったら迎えに来てくれたし。
雷が怖いのを知っていてそばにいてくれた。
そして体中が痺れるような、身体が蕩けてしまうようなキス。
発狂していないのは傷ついていないからだ。
私は、一矢くんの嘘で傷ついていない。
「……一矢くんは、私のどこがいいの。どうしてここまでしたかったの」
抱きしめられた腕の中で、行き場をなくした私の手が今、ゆっくりと彼の背中に触れようとしていた。
「また笑って話がしたかった。それにあの日から気持ちはきっと溢れて溢れていたんだ。自分が気づかないまま」
「都合がいい話だね」
じゃあさっき、自分でも自覚したの。
なんて私には言えるわけない。
私は恋を知らない。私には、その衝動が分からないはずだから。
「沢山傷つけて悪かった。許してくれとは言わない。でも一緒に住んでいって、今の華怜に惹かれていったんだよ」
私もだ。
どんなに忙しくても朝食を一緒に食べようと言ってくれた。
目も合わせない可愛げのない態度の私に、苺が好きだと勘違いしてデザートに頻繁に苺をつけてくれた。
男性恐怖症を克服したかと思って男性がいる飲み会で遅くなったら迎えに来てくれたし。
雷が怖いのを知っていてそばにいてくれた。
そして体中が痺れるような、身体が蕩けてしまうようなキス。