とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
そうだね。私ももう、ここまで私を必要としてくれて、私を好きだと言ってくれる人なんていないと思う。
私にも一矢くんしかいないと思うんだ。
「華怜の気が変わらないうちに、いますぐ役所に行きたいぐらいだけど」
「変わらないよ」
携帯を覗き込んでいた一矢くんが私を見て、驚く。
彼の中ではまだ一方的に自分だけって気持ちがあるのだろうか。
矢印が彼からだけ向けられているはず、もうないのに。
「変わらないけど、早い方が私もいいな」
「ちょっと、両頬抓って」
クスクス笑いながら頬を引っ張ると「いたひような、いたふないひょうな」と痛みさえも分からなくなっていた。
「しっかりしてよ。私、恋愛初心者なんだから。リードしてよね」
「ふ。残念だったら。俺も華怜と両想いになったのは初めてだ」
当たり前のことをどや顔で言う。そこはリードするよって言ってほしかったな。
仕方ないので、一緒に手探りで進んでいこう。
次の木曜日に私たちは入籍をします。
大人なのに子供みたいな、じれったい遠回りをしました。
私は逃げてばかりだったので、今はもう騙されたことに少しだけ感謝している。
意地になってケーキを二つ食べた後、二人して胸焼けしたねって笑い合った。
私たちの物語は、矢印がようやく重なり合った、ここから始まっていく。
私にも一矢くんしかいないと思うんだ。
「華怜の気が変わらないうちに、いますぐ役所に行きたいぐらいだけど」
「変わらないよ」
携帯を覗き込んでいた一矢くんが私を見て、驚く。
彼の中ではまだ一方的に自分だけって気持ちがあるのだろうか。
矢印が彼からだけ向けられているはず、もうないのに。
「変わらないけど、早い方が私もいいな」
「ちょっと、両頬抓って」
クスクス笑いながら頬を引っ張ると「いたひような、いたふないひょうな」と痛みさえも分からなくなっていた。
「しっかりしてよ。私、恋愛初心者なんだから。リードしてよね」
「ふ。残念だったら。俺も華怜と両想いになったのは初めてだ」
当たり前のことをどや顔で言う。そこはリードするよって言ってほしかったな。
仕方ないので、一緒に手探りで進んでいこう。
次の木曜日に私たちは入籍をします。
大人なのに子供みたいな、じれったい遠回りをしました。
私は逃げてばかりだったので、今はもう騙されたことに少しだけ感謝している。
意地になってケーキを二つ食べた後、二人して胸焼けしたねって笑い合った。
私たちの物語は、矢印がようやく重なり合った、ここから始まっていく。