とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
 メンバーズカードに今日のポイントを付けながら、私は愛想笑いで受け流す。

「まっさか。お世辞を言ってもポイントは増えないですよ」

「本当だってば。ベリーショートなのにワックスでぴょんって跳ねる感じのセットすごく可愛いし。なのにいつも色っぽいルージュでしょ。私、大人っぽい色が似合わないから憧れます」

「しょうがない。ポイントサービスしちゃおう。あと一つでサービス追加だから」

「やったー」

 メンバーカードに、店のロゴマークのハンコを五つ押した。

「半額チケットか、デコ盛り放題チケット、どっちか選べますよ」

「えー。悩むなあ。3Dネイル憧れるんだけどー、付けれないしい」

「結婚式用に付け爪としてでも付けれますよ」

「どうしようっ」

 メニュー表を開いて美琴さんに見せた。

 どれにするか真剣に悩んでいて、その姿さえも眩しく感じてしまう。

「やっぱ半額チケットにします」

「了解しました。じゃあ、こちら」

 支払いが終わった後も話し込んでしまい、気づいたら閉店間近になっていた。

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