とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
甘い苺をかじりながら、口の中に広がる甘酸っぱい味を噛みしめる。

私の視線は、今日も彼のエプロンの胸の部分。

カチャカチャと食器とスプーンの当たった音を聞きながら、テレビの天気予報の音に耳を傾ける。

愛もなし、相手に性欲もなし、ただ贖罪と借金のかたに一緒に居るだけ。

そんな不毛な私たちに、美味しい朝食は無駄じゃないのかなって感じた。

「苺、好き?」

「え?」

「最初に食べたから」

 小さく零れるように笑われ、手に持った一口齧った苺を見る。

 ついつい考え事をしてしまい、お行儀の悪い食べ方をしてしまっていた。

「好き」

 マナーもなっていない自分の行いを正当化するためのウソだった。

でもその次の日から、朝食に苺が出るようになったんだから、嘘なんてつくものではない。

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