とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
言っていることが無茶苦茶だなって思いつつも私も自分のネイルを見た。

私もブルーで統一したショートネイルだ。ジェルネイルだから艶が際立っているものの、パールやストーンは中指と親指で控えめだと思っている。

けど、このネイルを見て彼は、私は料理ができないと思っているなら些か不愉快かもしれない。

「腹が立つかもしれない」

「でしょ?」

「美香さんは辻さんになんて言い返したんですか?」

 別に私は言われたわけでもないのに、聞いてしまった。

「私の手料理、食べてみない?って誘ってみたの」

クスクス笑いながら、ネイルドライヤーに指を入れてランプを眺める。

「なんだ。ただの駆け引きじゃないですか」

「駆け引きを知らない生活をしている華怜には興味ないか。でも、――舐めて評価してくる相手に、一泡吹かせたくない?」

 美香さんは相手が好きで駆け引きをするより自分のプライドの方が大事なのか、先日までベタ褒めだった辻さんに対し、負かせたいとまで思っているようだ。

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