とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
でも。

ふと私も磨かれた自分の爪を見て気づいた。

彼が料理を進んでしているのは、もしかして私が料理しないと思っているのかも。

夜は不自然なほど家で食べないし、考えられる。

ネイルにお金をかけて家事をしない女――。

そこまで思われてしまうのってどうなのだろうか。

一応共同生活しているのだから、私だってできることは主張してみるのもいいかもしれない。

そもそも出勤時間が朝がゆっくりなのに対し、夜が遅いから夜ご飯が作れないと思われているかも。

ちゃんと朝、下準備してるのに。

「因みに美香さん、辻さんに何を作ってあげる予定なんですか?」

「それ。男ってお洒落な料理より、茶色い和食の方が評価しがちって」

「……へえ」

 煮物とか醤油ベースの料理ってことかな。

「和食で茶色って言ったら、華怜なら何?」

「私は肉じゃがと煮物とか、かな」

「あー、肉じゃがはおかずじゃねえっていう男を黙らせるために魚ね。分かる」

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