とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
「そーゆう『私は貴方がどうでもいい』って意思表示はダメージ大きいから聞きたくないなあ」

「ほお。それで私を起こしてまで話したい内容は妹さんのこと? 鍵を返してもらったならもう来ないんだし私は気にしないよ」

「それもなんだけど、冷蔵庫の中にある野菜のことなんだけど」

野菜。

そう言われ、閉店間際のスーパーで色々買ったことを思い出した。

素材だけあっても、私が料理ができる人間と言うアピールにはならない。

「冷蔵庫の材料は別に貴方に作ってあげたくて買ったものじゃない。ただ私も料理ができるってアピールのために二人分買っただけよ」

 変に意識されると困るのでさきにはっきり言っておこうと発言したつもりが、みるみる彼の首が真っ赤になり、ネクタイから上の顔をつい覗いてしまった。

彼の顔をまじまじと見ることなんて絶対にないと思っていたのに。

見上げた彼の顔は、茹でタコみたいに真っ赤。

耳も額も、分かりやすいぐらい赤い。

なんだろう。怖いという先入観はなく、この真っ赤の理由が知りたくて見てしまう。

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