とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
「ちょっとおおおお、まだあたしのカラオケが終わってないわよおおお」

オーナーがカラオケしましょうと、古いボックス型のカラオケマシーンをカウンターの奥から持ってきたまでは良かった。

その後、ショットガンを辻さんと交互に飲みだして酔ったオーナーはマイクを離さず、しかも帰らせてくれない。

「飲食代タダにしてあげるから、あたしの曲を聴いていきなさいよ」

「お金は払うよ~。ママの低くて野太い声も大好きだよ」

辻さんと牧さんで宥めつつ、美香さんと私で勝手にカウンターに入って水を用意して気づけばなかなか遅い時間になっていた。

「終電大丈夫?」

「うう。ちょっと危ないです」

「でも今、一人で帰るのは、華怜にはちょっと危ないよね。酔っ払いがうようよしてるしい」

「いえ、雨でなかったら大丈夫――」

そう伝えようとした瞬間、時間を確認して取り出していた携帯が震えた。

相手の名前は『南城一矢』
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