とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
「あんたも苦労するねえ。今時、親が決めた相手、ねえ」

「でも華怜ぐらい奥手なら、親がお見合い相手探して来なきゃ結婚なんてできないでしょ。それより、あんな格好いい結婚相手、ずるすぎ」

「美香ちゃんも可愛いんだから、男、男、男ってがつがつしてなきゃ、寄ってくるよ」

「はあ!? 白鳥さん、私もうすぐ30よ? 30歳が可愛いって思える男は、激減するんだからね」

美香さんが真っ赤な顔で言うと、唾を飛ばさないでよ、とクールに白鳥さんがかわした。

白鳥さんはお子さんもいないし、結婚もそんなに早くなかったと言っていたから、30歳でも全然遅くないと思っているようで美香さんとの価値観が違う。

「でも、どうしても嫌になったら私に言いな。そのお見合い、ぶっ潰してやるから」

「……白鳥さんは本当にしそうだから、ちょっと」

 あんなに嫌だったはずの彼が可哀そうに思えてしまう。
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