とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
彼が迎えに来てくれた夜から、私たちには和やかな時間が流れ出した。

過去のことを責めるわけもなく、何も知らない今の彼のことを少しだけ興味を持って観察してしまう。

「ぷっ」

ぷ?

洗濯物をたたんでお風呂場のクローゼットに片づけていたら、リビングから笑い声が聞えてきた。

リビングを覗くと、ソファに寝そべってテレビを見ている彼が見えた。

「ぷぷ」

また笑ってる。

足音を消して近づいてみてみると、お笑い番組のショートコントを見ていた。

「意外。お笑いが好きなの?」

「うわ、びっくりした」

飛び上がって起きると座り直し、バツが割りそうにテレビを消そうとした。

「見てていいよ。なんかクラシック聴きながら洋書読んでそうなイメージだったから」

「なにそれ。どんなイメージだよ」

そして、自分の隣をポンポン叩いた。

「お互いの好きなものを知るのは良いことだよ。華怜さんは何が好き?」

「えー……テレビなら警察24時とか好き」

「ぷぷ。恋愛ドラマじゃないの」

「それこそ、勝手なイメージじゃない。テレビ越しなら男の人を見れるなあって思って、悪い人がいる場所を勉強してるの」
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