とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
隣に座ってほしいオーラを避け、ダイニングテーブルの方に座る。

流石に隣に座るような大冒険はまだできない。

「じゃあ今度一緒に警察の見ようよ」

「仕事、忙しくないの?」

素直に頷けずにいると、彼は苦笑する。

「華怜さんとの時間をもぎ取り溜めに、ここのとこ残業頑張ってたんだよ。ほめていいよ」

「ほめないけど」

「だからもう少し、家でゆっくりできるかな」

「他人が家に居てゆっくりなんてできないし」

「他人じゃないでしょ」

この人、すぐ悲しいだの傷つくだの言うくせに、ぐいぐい来すぎだと思う。

傷つきやすい人は、私みたいに逃げればいいのに。簡単なのに。

「あー、俺の好きなコンビのショートが始まる。俺、この二人が好きなんだよね」

「ふうん」

「すれ違ってるのに、そのすれ違いが妙に合ってて余計に拗れる感じ」

やばっとクッションを引き寄せ、お腹で抱きしめながら倒れ込むように笑い出した。

おいおい、いつものクールな君はどこに行ったんだ。
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