とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
意外と笑い上戸だったと知る。

テレビではなくて笑っている彼を見ていたら、なんだか胸が変な感じ。

モヤモヤでもないし、ちくちくでもないし、ドキドキでもない。

柔らかいタオルを、指でツンツン押す感じにも似てる。

知らなかった感情を、刺激されてるようだ。

「いたっ」

「どうしたの!?」

 見れば、ソファから笑い転げた彼がいた。

「……何してんの」

「いつも家でもこんな感じ」

中学時代、君が窓辺で佇むだけで盗撮している女子で溢れ、私の髪に触れただけで「あのブス、生意気」とファンが聞えるようにつぶやいてくるのに。

クールなふりをして実は、家での彼はお笑い好きで笑い上戸で優しくて、傷つきやすくてちょっと強引な人だ。

「華怜さんも家ではもっと寛げばいいよ」

「寛いでるし。今もお風呂上がりですっぴんですよ」

「うん。すっぴんも可愛い」

 おまけに気障。思いっきりクッションを投げると、笑い上戸の君はケラケラ笑ったのだった。
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