とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
「華怜、今日はもういいよ」

19時を過ぎた時点で、外は斜めの突き刺さる雨が降り出していた。

水曜に来るはずの台風は、火曜の今現在、速度を速めてやってきている。

真夜中にはここら辺に上陸してしまうとかしないとか。

お店も予約をキャンセルされ、早々と閉店することになった。

「車で送ってやりたいんだが、早くても21時過ぎちまうよ。待てるかなら送るけど」

「いえ。バスが動いているので大丈夫です。お疲れ様です」

美香さんは非番で、お客も少なくて先に掃除や片づけを済ましていたので、助かった。

白鳥さんにお礼を言いつつ、バスが来たタイミングで走った。

 それでも傘が意味を持たないぐらいの雨に、マンションにつく頃にはびしょ濡れになっていたのだった。

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