とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
外で世界が割れるような音がしても大丈夫。

家まで割れるわけない。ましてやここは高級マンション。

そんなに簡単に雷が落ちるはずない。

シャワーの記憶は全くなくて、お風呂から出たら最初にイヤフォンをつけて服を着替えてた。

光る空、轟く稲妻、聞えてくる雷の音。

大丈夫。全然怖くない。大丈夫。

部屋中明るくすれば、雷なんて見えない。

化粧水を頬に打ち付けて平常心を保っていた時だった。

フッと明かりが消え、空の稲妻がカーテン越しでも見えた。

停電だとわかったのと、雷が落ちたバリバリと空を割る音。

「きゃあああああっ」

「華怜さん」

真っ暗な中、ヒーローのように玄関に現れたのは彼だった。
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