とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
「ブレーカーが落ちてる。びっくりした。玄関に入った瞬間、真っ暗になったから」

すぐに電気が復活し、心配げに私を見守る彼がそこに立っている。

「急いで帰ってきた。大丈夫?」

「……っ」

「なんでテーブルの下に隠れてるの」

「えっ」

気づけば私は、自己防衛本能でテーブルの下に隠れていたらしい。

「まあ傷つくぐらいなら逃げてくれた方がいいけどね」

カバンをソファに投げ捨てると、テーブルの下で役立たずになっている私を見て笑った。

「おいで。怖かったな」

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