とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
雷はしばらくカーテンの隙間から光っているのが見えたけど、隣に彼が居てくれたので大分気持ちが落ち着いていた。

飲み物を取りに行く時も朝作っておいたご飯を温める時も、隣に居てくれたのは本当に感謝している。

「部屋を暗くしなきゃホラーもそう怖くないでしょ?」

「うん。あの、ありがとう」

いつの間にか雷なんて消えていたのに、どちらとも気づいていたのに言わないまま、隣に座っていた。

彼は肩が濡れたままのスーツのままだったにも関わらず、優しく微笑んだ。

「お礼より、そろそろステップアップしない? 俺たちの関係も」

「ひ!?」

隣にいるのは平気だったけど、彼が手を伸ばしてきたので反射的に目を閉じてしまった。

なに? ステップアップ?

抱き寄せられた次は、何?

でも契約ではセックスなしでしょ?

混乱する中で、ふと気づく。セックスはなしでもキスとか?

キスさえ未経験だったけど、目を閉じて待っていたら彼がリードしてくれるのであれば。

「そろそろ、俺の名前ぐらい呼んでよ」
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