とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
「名前?」
「そう。頑なに呼ばないでしょ? 俺の名前」
思わず目を開けて彼を見上げてしまった。伸ばされた手は、テーブルの上に置かれたリモコンを取っただけで、逆に目を閉じた私の行動に首を傾げていた。
「俺の名は?」
「ちょ、ぷぷ。古い。ちょっと待って」
そういえば、彼とかあの人とか貴方とか言って、彼の前で名前を呼んだことはなかった。
「なに? 俺は昔から華怜さんに名前を呼ばれたかったんだから」
「中学の時は、名前で呼んでなかった?」
「昔の話はいいよ。辛いだろ。今の俺の名前」
「うん。一矢くん。いや、一矢さん?」
距離を保つには、さん付けの方がいいのかな。
さん付けで呼ぶと、少し不服そうだった。
「俺は華怜さんって呼ぶけど、君は呼び捨てで」
「なんで。どっちでもいいじゃん」
「じゃあ華怜。俺も華怜って呼ぶ」
先ほどまでの、私を強引に抱き寄せ安心させてくれた彼はどこにいった。
名前のことぐらいでムキになる彼は、ちょっとだけ子どもっぽい。
「まあ、一矢って呼ぶぐらい全然問題ないです。てっきりキスされるかと――」
っと余計なことを言いそうになって口を押えたけど、遅かった。
子どもっぽく拗ねていた彼の顔が、真顔になった。
「キスしていいなら、めちゃくちゃしたい」
「そう。頑なに呼ばないでしょ? 俺の名前」
思わず目を開けて彼を見上げてしまった。伸ばされた手は、テーブルの上に置かれたリモコンを取っただけで、逆に目を閉じた私の行動に首を傾げていた。
「俺の名は?」
「ちょ、ぷぷ。古い。ちょっと待って」
そういえば、彼とかあの人とか貴方とか言って、彼の前で名前を呼んだことはなかった。
「なに? 俺は昔から華怜さんに名前を呼ばれたかったんだから」
「中学の時は、名前で呼んでなかった?」
「昔の話はいいよ。辛いだろ。今の俺の名前」
「うん。一矢くん。いや、一矢さん?」
距離を保つには、さん付けの方がいいのかな。
さん付けで呼ぶと、少し不服そうだった。
「俺は華怜さんって呼ぶけど、君は呼び捨てで」
「なんで。どっちでもいいじゃん」
「じゃあ華怜。俺も華怜って呼ぶ」
先ほどまでの、私を強引に抱き寄せ安心させてくれた彼はどこにいった。
名前のことぐらいでムキになる彼は、ちょっとだけ子どもっぽい。
「まあ、一矢って呼ぶぐらい全然問題ないです。てっきりキスされるかと――」
っと余計なことを言いそうになって口を押えたけど、遅かった。
子どもっぽく拗ねていた彼の顔が、真顔になった。
「キスしていいなら、めちゃくちゃしたい」