キミの嘘
「じゃー試合開始」
田中くんの声でクラス内練習試合がスタートした。

事前に確認したポジションにそれぞれ散らばる。

「なんか緊張するね~」
「練習試合だし、緊張しなくても大丈夫だよ」
私のつぶやきにみきちゃんが苦笑いをする。

「はぁ。。不安しかない」
「練習だし、男子だって、女子相手に本気になることないでしょ。」
「まぁ・・・ね」

ボールは真ん中のほうで橘くんと田中くんが取り合いをしている。
サッカー部同士、さすがに上手。



私たちが練習しているグランドの隣は第二グランド。
ふと、となりのグランドを見ると
縁がボールを楽しそうにパス練習していた。

縁にあまり見られたくなかったな・・。
自分がうまくサッカーができないところ・・だけではなく
こうして橘くんといるところも話しているところも。



<杏は、あーゆのがタイプなの?>




縁の冷たい氷のような顔と声を思い出す。

胸がぎゅっと締め付けられて苦しくなった・・。
あの時、私は橘くんとのことをはっきりと否定しなかった。
縁は、噂になっていた先輩とのことを、はっきり否定していた。

でも、今は?
今は気持ちは変わっているのかな。

三年生、4クラスあるうちの2クラスがとなりのグランドで、練習しているみたいだった。

その中には噂になっていた先輩もいた。
縁の姿を追っている、のは、遠くから見た私からもはっきりとわかった。

あの時、もし、私が止めなければ縁と何か変わっていたのかな。

いろんな感情が湧き上がってしまい、

自分がサッカーの試合中ということも忘れていた。
だから、
すぐちかくにボールが来ているなんて気が付かなかった・


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