キミの嘘
「杏・・幸せか?」
あの日、橘君が私と付き合っていると縁に告げたとき、
縁が真剣なまなざしで私をみつめていた。
「大丈夫。ありがとう」
「そっか。杏が、幸せならそれでいい」
大きな手が頭にポンとふれた。
縁は、その日からわたしには触れることはしなかった。
★
夏休みが始まり
進学校だけに、最初の一週間は補講がある。
宿題も多いし
夏休みとはいえ、両手を上げて楽しめない。
一限目から七限目まできっちりある授業。
ほとんど学校と変わらない。
夏休みになって変わったことは
変わらず私は橘くんと登校をしていること
手を繋いで歩いていること。
縁がとなりにいないこと。
補講も折り返し地点の三日目。
部活があるからと、橘君は一緒に帰れないことを誤っていたけれど、一人で帰りたい気分だった。
とぼとぼと学校から歩いていると、
蘇芳くんが校門の前に立っていた。
長身で、足も長くて
モデルさんみたいだから
前を通る生徒がみんな振り返る。
「蘇芳くん、今帰り?」
ふわりと、優しく笑う笑顔。
「杏さん、待ってました」
...........
目の前にはアイスコーヒーをきれいな仕草で飲む蘇芳くん。
私と蘇芳くんは学校の近くにあるカフェに来ていた。
「蘇芳くんも、補講?」
「そうです。」
今年度は1、2年が同じ補講日程のようだ
3年生は受験もあるし、夏休みはほとんど補講で埋まるとか
縁に聞いたことあった。
「蘇芳くん、学校なれた?」
「はい。おかげさまで。」
目の前で蘇芳くんが微笑む
「転校してすぐ夏休みになっちゃったね~」
「‥本当は、二学期からの予定だったんですけどね。」
そういえば・・はじめて会ったとき
縁が言っていたような気がする。
「ご両親の転勤とかで転校したの?」
「・・・まぁ、そんなものです。」
少し歯切れがわるそうに答えた。
あまり触れちゃいけないことだったのかなと後悔した。
そんな私の気持ちが伝わったのか
「‥ここに来ることがいいのかどうか悩んだんですけどね」
「えっ・・」
から笑い・・・をする蘇芳くん。
「僕がいることで、いろんな人に迷惑かかるから・・」
悲しそうな表情をして、アイスコーヒーを飲んだ。
「そんなこと・・」
「杏さんにも迷惑かけてる。」
全く身に覚えがなくて驚く。
「えっ・・そんなことないけど?」
「今はわからないだろうけど・・。でも、僕は決めたんです。人に迷惑かけても手に入れるために動くと。」
「えっ?」
さっきとは全く違う、決意のある強い表情だった。
「どうしても。。ほしいんです・・」
強く強く、話す。
「すっかり付き合わせてしまいましたね。ごめんなさい。・・・縁に渡して欲しいのがあって杏さんの帰り待っていました。お願いできますか。」
縁の名前を聞くだけでドキドキする。
「今度、武術道場の合宿があるんですが、前回の練習のとき、飛行機のチケット忘れて縁はかえってしまって。」
テーブルに置かれたチケットは航空券。
合宿のこと、知らなかった。
最近、縁と会話していないから当たり前かもしれないけど。
航空券には、八月の半ばの日付、行き先が北海道だった。
縁は毎年、入門している武術道場の合宿に参加している。
縁と出会ったときはすでに武術はしていたしずっと合宿は参加していた。
一週間くらい泊まり込みで、帰宅するときはいつもどこか、けがをして帰ってきていた。
「蘇芳くんも毎年参加しているの?」
「えぇ。」
蘇芳くんは細身なのに、武術しているなんてびっくりしてしまう。
無駄のない筋肉・
武術のことはわからない。
だけど、彼のまとう空気やたたずまいから彼は強いのだと思えた。
「縁もつよいですよ」
「えっ」
「縁も強いです。彼は・・強くなりたいと・・大切な人をまもるために強くなりたいといっていました」
「・・・」
「縁のなかには、前から杏さんしかいませんよ。・・・杏さんのために縁は強くなろうとしているんです」
あの日、橘君が私と付き合っていると縁に告げたとき、
縁が真剣なまなざしで私をみつめていた。
「大丈夫。ありがとう」
「そっか。杏が、幸せならそれでいい」
大きな手が頭にポンとふれた。
縁は、その日からわたしには触れることはしなかった。
★
夏休みが始まり
進学校だけに、最初の一週間は補講がある。
宿題も多いし
夏休みとはいえ、両手を上げて楽しめない。
一限目から七限目まできっちりある授業。
ほとんど学校と変わらない。
夏休みになって変わったことは
変わらず私は橘くんと登校をしていること
手を繋いで歩いていること。
縁がとなりにいないこと。
補講も折り返し地点の三日目。
部活があるからと、橘君は一緒に帰れないことを誤っていたけれど、一人で帰りたい気分だった。
とぼとぼと学校から歩いていると、
蘇芳くんが校門の前に立っていた。
長身で、足も長くて
モデルさんみたいだから
前を通る生徒がみんな振り返る。
「蘇芳くん、今帰り?」
ふわりと、優しく笑う笑顔。
「杏さん、待ってました」
...........
目の前にはアイスコーヒーをきれいな仕草で飲む蘇芳くん。
私と蘇芳くんは学校の近くにあるカフェに来ていた。
「蘇芳くんも、補講?」
「そうです。」
今年度は1、2年が同じ補講日程のようだ
3年生は受験もあるし、夏休みはほとんど補講で埋まるとか
縁に聞いたことあった。
「蘇芳くん、学校なれた?」
「はい。おかげさまで。」
目の前で蘇芳くんが微笑む
「転校してすぐ夏休みになっちゃったね~」
「‥本当は、二学期からの予定だったんですけどね。」
そういえば・・はじめて会ったとき
縁が言っていたような気がする。
「ご両親の転勤とかで転校したの?」
「・・・まぁ、そんなものです。」
少し歯切れがわるそうに答えた。
あまり触れちゃいけないことだったのかなと後悔した。
そんな私の気持ちが伝わったのか
「‥ここに来ることがいいのかどうか悩んだんですけどね」
「えっ・・」
から笑い・・・をする蘇芳くん。
「僕がいることで、いろんな人に迷惑かかるから・・」
悲しそうな表情をして、アイスコーヒーを飲んだ。
「そんなこと・・」
「杏さんにも迷惑かけてる。」
全く身に覚えがなくて驚く。
「えっ・・そんなことないけど?」
「今はわからないだろうけど・・。でも、僕は決めたんです。人に迷惑かけても手に入れるために動くと。」
「えっ?」
さっきとは全く違う、決意のある強い表情だった。
「どうしても。。ほしいんです・・」
強く強く、話す。
「すっかり付き合わせてしまいましたね。ごめんなさい。・・・縁に渡して欲しいのがあって杏さんの帰り待っていました。お願いできますか。」
縁の名前を聞くだけでドキドキする。
「今度、武術道場の合宿があるんですが、前回の練習のとき、飛行機のチケット忘れて縁はかえってしまって。」
テーブルに置かれたチケットは航空券。
合宿のこと、知らなかった。
最近、縁と会話していないから当たり前かもしれないけど。
航空券には、八月の半ばの日付、行き先が北海道だった。
縁は毎年、入門している武術道場の合宿に参加している。
縁と出会ったときはすでに武術はしていたしずっと合宿は参加していた。
一週間くらい泊まり込みで、帰宅するときはいつもどこか、けがをして帰ってきていた。
「蘇芳くんも毎年参加しているの?」
「えぇ。」
蘇芳くんは細身なのに、武術しているなんてびっくりしてしまう。
無駄のない筋肉・
武術のことはわからない。
だけど、彼のまとう空気やたたずまいから彼は強いのだと思えた。
「縁もつよいですよ」
「えっ」
「縁も強いです。彼は・・強くなりたいと・・大切な人をまもるために強くなりたいといっていました」
「・・・」
「縁のなかには、前から杏さんしかいませんよ。・・・杏さんのために縁は強くなろうとしているんです」