眠姫にキスを。


今日は日直だったからいつもより来るのが少し遅れてしまった。


図書室に行くと先輩は寝ていた。

いつもカウンターにいるのに今日はテーブル席にいる。

気持ち良さそうに寝息をたてている。

周りは人がいない……。

高い鼻……長いまつ毛……何もつけてないのに綺麗な赤い唇。

柔らかそうだ……キスしたらどんな感じなんだろ……。

ゆっくりと唇を寄せた。

人生初めてのキス。

……やば……。

……めっちゃ柔らかい先輩の唇。

「……んん。」

…………は?

何か起きたんだけど。

やばくね?

バレたか?


「あぁ私、いつの間に寝て……って、あれ?いたの桜木くん。」

眠そうに瞬きして目を擦りながら俺を見る。

………………バレて、ない?

「……ってもうこんな時間!急いで鍵締めないと……。」

慌てて立ち上がる先輩は何事もなかったかのように、急がなきゃ、急がなきゃ、と言いながら荷物をまとめはじめる。

俺は無意識に先輩の唇に視線を向ける。

「どうしたの桜木くん?」

不思議そうに首を傾げながら俺を見る彼女は、俺がキスしたことに気づいてないみたいだった

「なんでもありません。」

バレてないならそれでいい。

……ごめんなさい良くないですけど、出来心ってやつですから。

心の中で言い訳をしていたのを昨日のように思い出す。

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