千紘さんのありがた~いお話
 



「このレモンのところに居たら、真昼さんがハチみたいに寄ってくるかと思って」
と龍平は言った。

 ハチか……。
 微妙な例えだな、と思いながら、

「あのー、なにか用事?」
と訊く。

「うん。この間買った漫画面白かったから貸してあげようかと思って。

 その代わり、ゲームまだ借りてていい?
 終わってないから」

 そう言いながら、龍平はスポーツバッグから、漫画の入った紙袋を出してきた。

 そのバッグ、そういうものが入ってたのか。

 いかにもスポーツ関係のものが入ってそうなバッグとガタイなのに、と笑いながら、真昼は言った。

「ああ、別にいいよ。
 あと三年はやりそうにないから、あのゲーム」

 すると、龍平は、
「大人の時間って呑気に流れてるねー」
と呆れたように言う。
< 157 / 429 >

この作品をシェア

pagetop