千紘さんのありがた~いお話
「このレモンのところに居たら、真昼さんがハチみたいに寄ってくるかと思って」
と龍平は言った。
ハチか……。
微妙な例えだな、と思いながら、
「あのー、なにか用事?」
と訊く。
「うん。この間買った漫画面白かったから貸してあげようかと思って。
その代わり、ゲームまだ借りてていい?
終わってないから」
そう言いながら、龍平はスポーツバッグから、漫画の入った紙袋を出してきた。
そのバッグ、そういうものが入ってたのか。
いかにもスポーツ関係のものが入ってそうなバッグとガタイなのに、と笑いながら、真昼は言った。
「ああ、別にいいよ。
あと三年はやりそうにないから、あのゲーム」
すると、龍平は、
「大人の時間って呑気に流れてるねー」
と呆れたように言う。